2012年8月28日火曜日

放射線影響研究所が論文の日本語概要を「改ざん」

放射線影響研究所「原爆被爆者の死亡率に関する研究、第14報、1950-2003:がんおよびがん以外の疾患の概要」英語論文の日本語概要が、7月末の時点で「改ざん」されていたと言う情報を、福島県南相馬市の市議会議員である、大山こういちさんのツイートで見かけました。

英語論文で、"The estimated lowest dose range with a significant ERR for all solid cancer was 0 to 0.20 Gy, and a formal dose-threshold analysis indicated no threshold; i.e.; zero dose was the best estimate of the threshold." という部分で、下記のリンクで読める全文和訳では、「全固形がんについて過剰相対危険度が有意となる最小推定線量範囲は0–0.2 Gy であり、定型的な線量閾値解析では閾値は認められなかった。すなわち、ゼロ線量が最良の閾値推定値であった。」の部分です。

調べてみると、確かに日本語概要が「改ざん」されていました。偶然、5月末に印刷してあったので、それを今アップされているものと比べました。「改ざん」箇所は赤字で示しました。

本文2行目終わりから4行目:

改ざん前:「総固形がん死亡の過剰相対リスクは被曝放射線量に対して全線量域で直線の線量反応関係を示し、閾値は認められず、リスクが有意となる最低線量域0-0.20 Gyであった。」 

改ざん後:「総固形がん死亡の過剰相対リスクは被曝放射線量に対して直線の線量反応関係を示し、その最も適合するモデル直線の閾値はゼロであるが、リスクが有意となる線量域0.20 Gy 以上であった。」

「全線量域」と言う言葉が抜かれており、「最低線量域」が「線量域」に変えられています。すなわち、0.20 Gy (200mSv)以下は、無視して切り捨ててしまっています。

はたして、下記の元情報での放影研との電話確認による返答のように、「内容は同じ」と言えるのでしょうか?

    **

元情報はこちらです。

http://ameblo.jp/megumi-jk/entry-11238511139.html
(追記 2012年7月31日)
先ほど確認したところ、上記日本語要約版リンク先の内容が「リスクが有意となる線量域は0.20Gy以上であった」などと書き換えられていました。
放影研に電話確認したところ、「内容は同じだが前の表現だと内容を誤解する一般の方が多かったので変更した」とのこと。

    **

英語論文

Studies of the Mortality of Atomic Bomb Survivors, Report 14, 1950–2003: An Overview of Cancer and Noncancer Diseases
http://www.rrjournal.org/doi/pdf/10.1667/RR2629.1

全文和訳

放射線影響研究所「原爆被爆者の死亡率に関する研究:1950-2003」日本語版
http://besobernow-yuima.blogspot.jp/2012/05/abcc-1950-radiation-research-14-1950.html

日本語概要

改定前(2012年5月)
https://docs.google.com/document/d/1ODzgGge5Vnp5ngxDwyN0M789AtPadD4qbO1hNjwHqmQ/edit

改定後(2012年7月末)
http://www.rerf.or.jp/news/pdf/lss14.pdf

   **

ちなみに、この論文は、イアン・ゴッダード氏がビデオで取り上げています。







 
ナレーション日本語書き起こし

https://docs.google.com/file/d/0B5qUOl0_hAfnTF9BTTRfWGpDczg/edit?pli=1

2012年8月16日木曜日

蝶の異常に関するヤブロコフ博士の見解

東京電力福島第一原発事故の影響により、福島県などで最も一般的な蝶の一種「ヤマトシジミ」の羽や目に異常が生じているとの報告を、大瀧丈二琉球大准教授らの研究チームが英科学誌「Nature」で発表しました。

The biological impacts of the Fukushima nuclear accident on the pale grass blue butterfly
http://www.nature.com/srep/2012/120809/srep00570/full/srep00570.html

この研究結果については、人間には当てはまらない、人間や動植物にとっても大変重要な意味合いを持つ、など様々な見解があります。そこで、ロシアのアレクセイ・ヤブロコフ博士にメールでお伺いしてみました。

ヤブロコフ博士は、ロシア科学アカデミーのメンバーで、生物学博士であり、生態学研究者です。1986年のチェルノブイリ事故当時、ゴルバチョフ書記長のアドバイザーを務め、ボリス・エリツィン政権下においては、ロシア連邦安全保障会議の環境安全委員会の委員長を務めました。ロシアのグリーンピース設立者でもあります。また、“Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People and the Environment"  「チェルノブイリ:大惨事が人びとと環境に及ぼした影響」の著者でもあります。 http://www.strahlentelex.de/Yablokov%20Chernobyl%20book.pdf

*****************************************************************************************************

メールをお送りしたところ、お返事を下さいましたので、下記に和訳と共に掲載いたします。


基本的な生物学的法則というものがあります。もしも何らかの要因が何らかのレベルで突然変異や奇形(変異原性か催奇性)と言う結果をもたらしたのなら、そのレベルでのその要因は、いかなる生物に対しても明らかに危険です。原子力発電所周辺での昆虫の突然変異は、こちらでご覧いただけるように、コーネリア・へシー=ホネガーによって描写・記録されています。
http://www.wired.com/magazine/2010/04/pl_arts_mutantbugs/

現在、福島の蝶に突然変異や奇形が見つかっていると言う事ですが、これは疑いなく、人間にとって良くない印と言えます。


英文
There are fundamental biological laws:  if some level of any factor resulted in mutations or malformations (mutagenic or teratogenic), the factor at that level obviously is dangerous for ANY living-being.  Insect mutations around nuclear power plants have been well depicted and documented by Cornelia Hesse-Honneger as seen here: http://www.wired.com/magazine/2010/04/pl_arts_mutantbugs/

Now Fukushima butterflies are found with mutations and malformations:  this is undoubtedly a bad mark for human also.